目標管理は、売上?利益?

 会社の業績を表す数字の1つとして「売上高」があります。『来期の目標を売上20%アップの1億2,000万円にします!』なんていう経営目標も良く聞くでしょう。いわゆる“売上管理”というやつです。あまりにもこの“売上管理”が横行している事にとても疑問を感じます。

 なぜ売上管理が横行するかというと、それは単純で、数字を出しやすいからです。商品価格×販売数量、毎日の売上の積み上げ、なので誰にでも分かります。小学生でもわかります。


売上高が一番重要?

 では、会社の目的は「売上を上げる事」なのでしょうか?売上さえ上げれば、赤字でも良いのでしょうか? 誰でも「NO!」と答えるでしょう。「黒字にする為には売上を稼がなければならないんだよ!」と反論が来たりします。こはい、つまり、黒字=利益を出す、事が目的です。にも拘わらず、売上にこだわる経営者さんが多すぎます。

 売上を追うと、金額を稼ぐために商い量を増やそうとして薄利多売になります。多売により、扱う量・仕事量が多くなると、人件費を含めた経費が高くなります。償却資産の消耗も早くなります。事務所や倉庫が手狭になります。業務が煩雑になって失敗・クレームが増えます。心当たりがある方も多いのではないでしょうか?


「最低必要粗利益額」を考えよう

 私は、経営改善にあたって、基本的に「利益管理」「利益基準」をお願いします。その際に簡単な考え方として、まず「最低必要粗利益額」の計算からスタートします。

必要粗利益額 = 一般管理費 + 支払利息 +元本返済 + 投資準備金 + ボーナス給与

 管理費20,000千円+支払利息1,800千円+元本返済5,000千円+投資1500千円+ボーナス3,000千円

=最低必要粗利益額=31,300千円

これ以上の粗利を出さなければキャッシュ的にも将来的にも事業を継続できません。足らない部分は借入で補うしかなく、借入が増えれば、利息・元本返済が増えて、必要利益額が更に増えるという悪循環です。

 ※ボーナス給与を含めるかは自由ですが、これから改善を進めるにあたって、社員さんの協力や

  モチベーション向上は必要不可欠だと思います。


 計算式を見ると当たり前のことだと思うかもしれませんが、意外と意識している経営者は少ないように思います。例えば、前年度の売上額を維持した場合、今まで通りの仕入や生産をすると黒字になりますか? 

 例えば、上記の「×」モデルのように、赤字になる場合、焦って売上拡大を考えると、更に赤字を膨らませる可能性もあります。赤字になるという事はビジネスモデルその物が破綻してるという事なのに、そのビジネスモデルを拡大しても決して黒字になる事はありません。


経営改善の第1歩は

 一般管理費を削減する努力は絶対に必要です。しかしながら、長年経営している中で無駄がそぎ落とされている場合が殆どです。つまり、役員報酬でも削減しない限り、一般管理費が劇的に減るなんてことはありません。もちろん利子も減らせません。元本返済も待ってもらえません。将来の投資は避けられません。

 という事は、減らせるところは「売上原価(製造原価)」しか残っていません。この売上原価を下げる事が、まず最初に取り組むべき経営努力だと、私は思います。そして、売上原価を削減しても必要粗利益額を達成できない状況になって初めて売上拡大路線に進むべきですし、その状態であれば、売上拡大の効果が最大限に発揮されると考えます。

  1. 必要粗利益額を計算する
  2. 前年度の売上額を当てはめて、目標粗利益率を計算する
  3. 粗利益率を基準に、見積価格の見直し、仕入価格の見直し、生産工程を改善する
  4. 粗利益率を高められてから売上拡大路線へ


特に、資金力・人材力が不足している企業さんには、この考え方をして欲しいと思います。

兎にも角にも、利益を稼ぐことが企業の第一目的であることを念頭においていただきたいと思います。その上で、具体的な改善策を講じるべきです。

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