「付加価値を捨てている」
ものづくりにおいて付加価値(利益)が発生しているのは、正味の作業時間だけです。狭義で言えば、設備が材料を加工している時間です。段取りや運搬、検査などは正味作業時間ではありません。
広義では、加工に必要な段取りなどの付随作業も(正味)作業時間と言えるかもしれません。
とある企業で、検品工程の現場改善の提案を行いました。
【一連の作業内容】
- 1ロールで100~1000単位の完成品が取れる
- ロールの状態で全数検品していく
- 不良などの使えない部分に、テープで丁寧にマーキングしていく
- 後工程で不良個所もそのまま一緒に裁断していく
- 裁断された製品の中から、マーキングされた不良品だけを抜き取る
グレーゾーンの不良が多く「疑わしきは不良」という考えで、次々にマーキングされていきます。
後工程の裁断機で詰まらないように、テープマーキングを一生懸命、丁寧にやっています。
報告会の中で、一緒に改善提案をした方が使った言葉が印象的で、企業の担当者さんもかなり心に響いたようで、報告会終了後も何度もそのことをおっしゃってました。
「付加価値を捨てている」
様々な工程を経て裁断工程に進むわけですが、それが不良品であっても、各工程で正味作業をして付加価値(利益)を付けて来た製品です。ましてや、この企業に関しては、その不良品に一生懸命マーキングをして、しかも不良だと分かっていて裁断して(付加価値を付けて)いる訳です。そして、それを捨てる。
もちろん、不良を垂れ流すことは一番問題です。しかし次に問題なのは、不良品の製造に時間と労力をかける事です。川下の工程になればなるほど、不良コストは高くなります。
下の図は一例です。
【工程1】で不良が発生したとします。【工程1】の工程内検査で不良を発見できれば、170円の不良コストで済みます。しかし【工程3】で発見した場合、300円の不良コストになります。
「いかに不良を作らないか」⇒「作ってしまったら、いかに早い段階で発見するか」⇒「次の工程に流さないか」...とっても大事な事です。
不良に関しては、「自己完結型」の工程でなければいけません。
今回の企業では、「検品工程があるから前工程の不良を垂れ流す」「後工程の裁断機の設備的弱さを検品工程で補っている」、つまりは検品工程が前後工程の緩衝材になっている訳です。
本来、“緩衝材”は製品ではなく捨てる物です。緩衝材が無くても済む、製品設計・工程設計をしないと生産性は上がらないと感じました。
不良品の製造に時間と労力をかけていないでしょうか?
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